明日は明日の風が吹く

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タムリエル放浪記

Tomorrow is Another Day
旅の記録

VIGILANT EP1 召喚術師

VIGILANT
未プレイの方はご覧にならないようにご注意ください。
ネタバレありSS集 EP1

 

俺達の拠点“ロッジ”に、ステンダールの番人のアルタノさんがやってきたのは、未知の魔物が出没するようになってからしばらくたってのことだった。

これまでにタムリエルでは見られなかった魔物たちがどこからともなく現れ、束の間の平和は破られた。

そんな中、連携を強化しようということで、番人たちとシグルドの間で話がまとまり、俺もシグルドのお供として、ステンダールの番人たちに同行することになった。

番人たちとは何かと縁があるけど、彼らがどんな活動をしているのか、内情は知らなかったし、たしかに良い機会だ、なんて、はじめはそんな感じで、物見遊山気分だった。

まだその時は、あんな深い深い闇が待ち構えているなんて、考えもしなかったんだ――

 

「ついたぞ。ここがステンダール聖堂だ」
「おおお!すげえ!」
「こんな山奥に要塞があるなんてなあ」
「番人の間が襲撃されたことを覚えているか? 
 番人たちは常に危険に晒されている。
 デイドラと戦うというのはそういうことだ」
「マルカルスでは世話になった。
 君たちの協力がなければ、モラグ・バルをあの館から払うことはできなかった」
「え… あの、ティラヌスさんの…」
「彼のことは残念だったが、相手はモラグ・バルだ。無念を晴らしてもらえて、感謝している」
(おっさん、なんでそういう大事なこと言わねえかなあ…)
「ホワイトランに吸血鬼が出没したらしい。」
「いきなりホームグラウンド! 任せとけ!」
「男性ばかり、殆ど喰われた、といってもいい殺され方だ。普通ではない。注意しろ」
「不気味な空の色だな……まずは酒場で情報集めだな」
「お兄さん、スイートロールはいかが? 夜になったら、是非来てね」
「へへ、可愛い子だったな… でも、滅茶苦茶怪しいよな… 行ってみるか…」
「来てくれたのね! さあ、こっちへ…」
「お待ち遠様…スイートロールはいかが――」
「ですよねーー!!! ってなんだこいつ…ッ!! ただの吸血鬼じゃ――」
「ふう。いつでも俺が間に合うとは思うなよ」
「おっさん!」
「見てたならもっとはやく助けろよ!」
「鼻の下を伸ばしているから後手に回るんだ。しかし雲行きが怪しくなってきたな。
 ここからは二人で動くぞ」

 

「各地でデイドラを召喚してまわっている女、か」
「ホワイトランの次はウインドヘルム…」
「宿の中で召喚とはまた物騒だな」
「つっても静かだぜ? もっと騒ぎになっていてもよさそうだけど…」

 

「召喚者の女にちょっかいを出そうとした酔漢を八つ裂きにして、その後部屋に居座っているらしい」
「デイドラともなると衛兵の手には負えないだろうしな…」

 

「そういう俺もデイドラとかそんな戦ったことないし…腕が鳴るぜ!」
「…転ぶなよ。踏み込むぞ。」
「え、あれ…」
「気持ちよさそうに寝てるな…」
「…困ったな。しかしまあ、このまま居座ってもらうわけにもいかん。ご退場願おう」

 

「寝起きでもデイドラはデイドラだ!油断するなよ!」

 

「次はその目をみた人間が次々発狂したっていう男か…」
「謎の女に片目をくりぬかれて石を埋められた?」
「もう疲れたんだ。いいから放っておいてくれ」
「なんで殺したんだよ… 助ける方法があったかもしれないのに」
「慈悲だ。もう彼もこの邪眼に食われかけていた」
「だからって…」
「何度言わせる。いい加減に腹をくくれ。
 例えば俺がデイドラに堕落させられたとしたら、迷わず俺を殺す覚悟を持て。
 俺たちはそういう相手と戦っているんだ」
(そんなこと、できるわけないだろ…)
「こんな辺鄙な場所に拠点があるんだな」
「ヤコブじいさん、ご無事で」
「おお、アルタノ。心強い味方を連れてきてくれたな」
 
「リフテンの酒場に居座るデイドラ、それにラットウェイではカジートがデイドラ召喚?」
「なんだか奇妙な状況になってきたな」
「ジョヴァンニ……」
「これは…ジョヴァンニの夢?」
「そんな……」

「奥さん…取り戻してきたぜ… ごめんな……」
「おっさん!! そいつは!?」
「手を出すな!手練れだ!召喚術師は中だ!」
「何者だ? 何故召喚術師に従う」
「家に帰りたいからだ」
「何?」
「良い腕だ」
「チッ…癪だが貴様もな」
「大丈夫か!? 派手にやられたな…」
「何をぐずぐずしている! アルタノを追え! 地下だ! 俺もすぐに行く」
「ヤコブさん!無事でしたか!」
「また私だけ生き残ってしまったよ… 召喚術師… あれは私の妻かもしれない。
 かつて私が裏切った――」
「何で地下にモラグ・バルの祭壇なんかがあるんだ?」
「それを封印するためにこれを建てた、ということか…? だが、危険すぎる」
「召喚術師…!」
「あらあら、せっかく殺さないでいてあげたのに… どうしたのかしら、ヤコブ」
「やるしかない。迷っていたら、死ぬのはこちらだ」
「わかっておる…わかっておるよ…」
「ヤコブじいさん!」
「下がれ! とどめは俺がさす!」
「どうしたのヤコブ。そんな声を荒げて。怖い夢でもみたの?」
「ああ、君がいなくなってしまう夢だ。もう君を離したりしない」
「ヤコブさん…」
「私はヤコブとバル…いや、ラヘルを弔ってから、本部に戻って報告をする。
 このモラグ・バルのメイスの処置を考えねば。
 ふたりともすこし休んでくれ。ああ――もうひとつ、そのついでにでも、
 魔女の退治を頼みたい」
 
「魔女か… アルタノさん、妙にこだわってたけど… この事件に関係があるのかな?」
「さて、な。番人に多く犠牲が出た。手が回らなくなったということだろう」
「プランターに薬草… うーん、おっさん、これ、ごく一般的な錬金術の触媒だぜ。
 うちの母ちゃんだって植えてたよ。家も手入れが行き届きすぎてねえか?」
「きれい好きの魔女がいてもよかろう。踏み込んでみればわかることだ」
「“ここは俺に任せてくれ” “わかった、おまえを信じよう”」
「下手な声まねをするな。好きにしろ。」
「なるほど…旦那さんの呪いを解くために、か… でももうここは危険だ。逃げた方が良い」
「ありがとうございます。貴方が来た、ということは、そうなのですね。すぐに出発の準備をします」
「たしかに魔女はいるっぽいが、あの二人はちがうぜ。」
「今は第四期だ。魔女狩りに躍起になるというのもナンセンスだな。
 アルタノには適当に報告しておけ。俺は砦に戻って祭壇を調べる」
「了解。あんたもあの戦士に受けた傷が治ってないんだろ? 無理すんなよ。」
「ふん。呪いの武器の傷は多少厄介だが、そう深手でもない」
(……呪い――? ん…?)
「じゃあ俺はアルタノさんとこにいってくるぜ」
(……… あれ? )
(何だっけ… 俺はどこにむかってるんだ…? アルタノさん? 
 アルタノさんが、メイスを… メイス?)

 

「え?」

 

「うそだ…」

 

「お嬢ちゃん… 奥さん!? …え……」

 

「俺が…俺がやったのか? そんな……」

 

「嘘だ… 何で…… どこからどこまでが夢だったんだ…? おっさん… おっさんはどこだ?」

 

「アルタノさん…… 何を… 何をしたんだ!?」

 

「待て!何でこんなことを…! クソッ!!」

 

「あのメイス… あのメイスでモラグ・バルを呼び出すつもりだ… おっさん! シグルド!!どこだ!」

 

 

「ちがうんだ…そんなつもりじゃなかったんだ… あんたたちを殺すつもりなんて…」

 

「殺したくなかった… 助けたかったんだ… 許してくれよ…!!」

 

「アルタノさん!! やめろ!!!」

 

“ステンダールの子よ。跪き、服従せよ。その魂を我に捧げるのだ。さすれば安らかな死を約束しよう“

 

「アルタノさん!!」

 

「オーズ!!下がれ!」
「おっさん!?」
「間に合わなかったか…逃げろ!」
「逃げるわけねえだろ! 何言ってんだ!」
「相手はモラグ・バルだ。足手まといだ。」

 

 

「俺だって同胞団の戦士だ!最後まで戦うぜ!」
「お前を守る余裕はない。命令だ。ここに残るなら、絶対に死ぬな」
「わぁってらあ! アルタノさんの仇!」
「アルタノはまだ息がある。はやく終わらせるぞ」
「あ、はい」

 

 

「これはモラグ・バルの影にすぎない! とはいえ ――ぐっ」
「なんつうパワーだ… おっさん、あぶねえ!」

 

「俺が攻撃を引きつける! おっさんはがんがん削ってくれ!」
「デイドラ公を殺せるのか、という難しい問題がついてくるな」
「え!? そっから!?」

 

「鬼さんこちら…ッってマジこええええ!!」

 

「ちっくしょう…もうもたねえ…」
「一瞬で良い。動きを止めてくれ。俺に考えがある」
「了解!」
「ドラゴンレンドを、中に叩き込む」

 

「効いた!?」
「不死の影に定命の概念を与えれば、その存在そのものが―― 何!?」

 

「オーズ!! 伏せろ! 爆発する!」
「えええええええ!!」
「ッ…!」
「おっさん!!」

 

“二人で死ぬか、魂を捧げるかだ。ドラゴンボーンよ”

 

「そういう魂胆か。企みの神」

 

 

「おっさん! 今助けるから――」
「メイスを…壊せ…」

 

「おっさ…」
「来るな!!」

 

 

「おっさん!!!」

 

 

「そんな…」

 

「おっさん……」

 

 

「…なんで……なんで… なあ…死んでないよな? どっかで生きてるんだよな? なあ…」

 

アルタノさんは今際の際に、メイスに触れた瞬間、モラグ・バルに屈してしまったと話してくれた。

どんな信念も、ステンダールの加護も、彼らを守りはしなかった。

結局、みんな死んでしまった。

モラグ・バルの前では、みんな無力だった。

 

でも、きっとまだ、何も終わっていない。

始まったばかりなんだ。

 

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